世界の名作として名高い「赤毛のアン」を読みました。
原題は「Anne of Green Gables」「グリーンゲイブルズのアン」でしょうか。
日本で最初に訳した村岡花子が「赤毛のアン」とつけたとのこと。
その村岡花子訳の文庫もありますが、読みやすそうな西田佳子の新しい訳を読んでみました。
情景描写が繊細で読みやすい
大判で分厚いですが、とても読みやすいので、読み始めたらあっという間に読み終わるような感じがします。(実際には時間はかかる)
特に風景の描写が丁寧で、それはアンの想像力がそうさせているところもありますが、舞台であるカナダのプリンスエドワード島の景色を思い浮かべながら、赤毛のアンの世界に浸ることができます。
しゃべりまくるアンが愛される理由
アンはめちゃくちゃしゃべります。小説の3分に2くらい喋っているのではないかと思うくらいに、しゃべりまくっています。
ときに大袈裟に、ときに客観的に、「あなたも想像してみて、孤独で誰にも愛されてこなかったらこうもなるでしょ」という感じで、自分のことを棚に上げまくります。
アンにとって大事なことは絶対に譲らないので、クソ生意気でクソめんどくさいのですが、愛さずにはいられなくなってくる不思議な女の子。
またアンが悩んでる「赤い髪」や「そばかす」のことを言われた日には激怒して癇癪を起こす。
状況を打破するためには自分が傷つく嘘も辞さない。嘘をついたら後悔するだろうけど、それ以上の楽しみがあるなら大嘘をついてでも手に入れる。
そんなアンでも多くの人に愛されます。意地悪な人はいるけど、それすらもアンにとっては大きな問題になりません。
それはなぜかというと、
自分の望むことに忠実で、自分の言ったことには責任をもっているから
アンのことを否定することができないのです。
羨ましいとも思っていないでしょうし、アンのようになりたいとも思っていない。
みんな、アンという存在が愛おしくてたまらなくなるのです。
アンの変化とマリラの成長、そして救済
物語の冒頭、マリラは偶然、手違いで孤児のアンを引き取ります。本当は男の子を引き取るつもりでしたが女の子が来てしまい、思うところがあるけど女の子のアンを引き取ったことから、マリラの人生も大きく動き出します。
僕はアンの物語と同時にマリラの物語にも惹かれていきました。
マリラは人付き合いが得意ではなく、まさか女の子を引き取るなんて誰も思わないような人物ですが、アンを通じて母性のようなものを自分で認識していきます。
なかなか素直に表現できず、アンには少しキツめに当たり続けているのですが、アンはアンで想像力が豊かで相手の気持ちを汲み取れるので、表現せずとも愛情を感じています。
アンは頭が良く、良い学校に進学するために家を出ます。その旅に出て帰ってくることで、大人に変化します。大人への成長とも言えますが、本質は変わっていません。
知識や他人の心を知ることで、行動が変化して帰ってきます。
帰ってくると不幸があり、続きが見えていた進学の旅を一旦終えてマリラと生きていくことになるのですが、ようやくマリラは愛情を口にすることができるようになります。
そして目が悪くなったマニラはアンを頼ることができるようになります。
最後に救われたのはマリラです。
アンはそんなことでは犠牲になったりせずに、現状のなかで最大限の努力をすることを決意しています。
「赤毛のアン」は
マリラがアンを救い、そしてアンがマリラを救う物語
でした。
小説の構造としては、「アンの生きて帰りし物語」と「マニラのビルディングスロマン」の二重構造と言えるでしょうか。
とても読みごたえのある名作でした!