すべての本を読む。/「こうして書いていく」(藤谷治)

世界に存在するすべての本を読むことはできないことはできない。すべての本を認識することも不可能である。それでも、すべての本を読んでみたいと心のどこかで思っているのが、本を読む人なのではないかと思う。
 
読んでも読んでも忘れていってしまうということが、ぼくには耐えられないのだけれど、忘れてしまっていることすら忘れてしまうくらいに、本を読んでしまえばいいのだと、あきらめようとしている。すべての本を読むことができないことと同じように、読んだ本を覚えておくこともできない。これはもう、しかたがないことなのだと、思うようにしなければならない。
 
しかし、自分が見つけた本、読みたいと思った本は、全てを読むことができるかもしれない。本を読むということについてまずは、そこを目指すべきだろう。ときには読むことが怖くなったりするけれど、いつか必ず読むのだと手元に引き寄せておく。まずは読むことを躊躇しないようになる。
 
このようにぼくは、読みたいと思った本をすべて読みながら、書いていくつもりである。読んでも読んでも書くことに影響されない力がついたとき、自分の言葉で書けるようになってきたといえて、書く力量として一線を超えたと言えるのではないかと考えている。そしてそのとき、書いていることを誇れるようになるかもしれない。