仕事とは台本通りに進めること。

ぼくは会社の仕事を、事前に用意した行動で執り行うようにしている。それを繰り返していくことで経験を積み上げ、同じことばっかりになっていった。用意した行動をすれば、相手の反応だけに集中できる。相手の反応に合わせて、また用意した行動をする。これもまた繰り返すことで、用意できる行動が増えていく。

会社の上司たちには臨機応変に柔軟に動ける人間だと言われているけれど、ぼくはマニュアル通り動いているだけだと思っている。また前向きに仕事をしているように見えるらしいが、ぼくは、用意した行動をして思い通りの反応が返ってきたり、反応が違っても、きちんと反応して気持ちよくその場が終わることだけを考えている。

ぼくはそういうことを人に教えることができない。台本通りに進めるということをどう説明して良いのかが分からないのだ。ぼくの感覚として、ぼくの周りだけかもしれないが、とにかく考えない人が多い。考えない人に考えるように促すほど大変なことはない。なんせ、ぼくが、「その人に考えてほしい」と考えていることが理解されないのだから

しかし人はアドリブを求める。アドリブを評価する。ぼくが会社の中ながらも評価されている部分も、アドリブがうまいからだ。本当は違うのに。アドリブほど大変なことはないし、アドリブほど行動していて面白くない。アドリブは反省ばかりが後に残って、つらいだけである。

考えることは楽しい。考えたことを実践して、その結果について考えることが経験なのだ。考えたことが間違っていたら、また考えて直せばいい。アドリブの失敗はダメージが大きくてトラウマにさえなってしまう。ぼくはそんなつらい毎日を過ごしたくないから、仕事を台本通りに進めていく。