「生き抜くための数学入門」(新井 紀子)

僕は大学で数学を学んできたこともあり、数学には少しだけ思うところがある。

数学に関して、学んだ(暗記した)ことの多くは忘れてしまったし、

問題を解くということに関しては、今のところ興味がない。


本書を手に取ったのは、数学を数字や定理を扱う学問ではなく、

タイトル通り「生き抜くため」に数学をどう捉えるべきか、

僕が学んだ数学には、どういう意味があったのかを探るためである。

新井 紀子

理論社

(2007-02)

ISBN: 9784652078235

目次

授業の前に そもそも、それってなーに?

1回めの授業 かけ算を宇宙人に教えよう

2回めの授業 数学的な構えをチェック

3回めの授業 俳句の可能性は無限大か?

4回めの授業 億万長者になる方法

5回めの授業 国語と数学のふかい関係

6回めの授業 数直線は変な線(前編)

7回めの授業 数直線は変な線(後編)

8回めの授業 四角形って何だっけ

9回めの授業 ゲームを定義する

10回めの授業 かけ算の筆算はなぜ正しい?

11回めの授業 累乗のこわさとおもしろさ

12回めの授業 あんなグラフ、こんなグラフ、どんなグラフ?

13回めの授業 計算できない関数

14回めの授業 みんなだいっきらいな 三角関数(前編)

15回めの授業 みんなだいっきらいな 三角関数(後編)

16回めの授業 博士の愛した数学に挑戦!

最後の授業 数学があきらかにするもの

数学が存在する意味

数学は「直感的に正しいこと」を語っていない。

数学は「論理的に正しいとする前提条件」の組み合わせで、成り立っている。


僕は数学は作り物だと考えている。


人間が作ってしまった数学の素から、不思議なことが生まれ、

その不思議を説明しようと賢い人たちが、

論理的に正しいことにする前提条件(公理)を作ってきた。


また数学は、使われる学問だと考えている。


物理や経済などを語る上で、数学の論理的な正しさというものが必要になることがある。

物理現象を、誰が見ても納得させるには、数学が必要であるし、その数学は疑ってはいけない。

また、教育における「数学」の立ち位置も、1つの使われ方である。


論理だけで「だから」「どうして」「どうなる」というのを考え続けることができ、みんなで共有することができるというのが数学の最大の特徴なのです。

社会は、目に見えない概念について「だから」「どうして」「どうなる」を論理的に考え、比較検討できる個人を前提とした社会です。その能力を身につけておかないと、原因はわからないけどなんとなく不幸、という状態に陥ってしまうのです。

社会で「幸せ」に生きるためには、出来る限り、論理的に考えることが必要になる。

物事を論理的に考えることをあきらめ、なんとなく非効率に生きて、

不幸せに気づかないという可能性もあるし、それはそれで幸せだという意見もあるだろう。


日常においても、論理的に捉え、できるだけ無駄を省こうとするタイプの人間は、

それだから「理系」は、頭でっかちなんだ、といわれることさえある。

こういう世間が、数学に弱い日本人の姿なのではないかと考える。


現在はびこる、エンターテイメント、商品展開、は、

まさに数学に弱い世間の隙をついたようなものになっているように思う。

「理由のない良い感じのもの」「理由がわからない人気」が、売れる要素にさえなり得る。


また、典型的なものとしては、AmazonやiTtunesなどのレビューにも現れていると考えている。

これらに書かれているレビューは、

ひとりよがりなものが多く、誰のためのレビューかの観点が全くない。

的外れな、そのものの本質ではない、前提となる仕組みを理解していないものも多い。


数学的な論理的な正しさ、を身につけるのは、

文明社会で生きていくための前提であることを、もう少し考えた方がよいと思う。

数学が「必修」である理由を、教育者はちゃんと伝えていかなければならない。


また、本書の最後にも書かれていることだが、

数学は、数理論理学と言われるなかでの、ほんの一部でしかないと言われている。

数学が論理的に作られている限り、証明できなことの方が多い。

これは、世界で目に見えて起こりうる事象のほとんどが、

論理的に証明できない、よく分からないことなのである。


そういう無数のよく分からないことに対して、僕はどう臨んでいくのか。

おもしろいことはもうすでにすでに始まっている。

問題は、「で、やるの? やらないの? どっちなの?」

ということなんでしょうね。

むなしがっているヒマなんて、ないんだと思いますよ。

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