隠しきれない父性があるらしい。

 かれこれ7,8年くらい前になるだろうか。高校生だと言っていた女性とメールのやりとりをしていたことがあったのだけど、あるとき突然「子供をあやしながらメールを書いてそう」と書かれていたことがあって、その飛び抜けた想像力と妙な嫉妬心と、ぼくの持ち合わせる父性的なものに愕然としたことがある。
 ぼくには子供はいなかったけれど、そのころのぼくは父性的なものを求められていたのだと思う。それを全く知らない人に、しかもメールだけで見抜かれたということが恐ろしかった。
 子供を持つ可能性がない今でも、結婚していると思われたり、子供がいそうと言われたり、どうにもぼくは父性的なものを隠すことができないらしい。また、たまに「優しい」と言われることがあるのだけれど、それは「その優しさは私に向けないでね」という風に言ってることがわかってきて、つまり「優しい」=「妻帯者のいいお父さん」と見られていると思うと、なんとも切ない気持ちになるのだった。