アドラー再び /「アルフレッド・アドラー 人生に革命を起きる100の言葉」 (小倉広)

 先日アドラーについての書籍嫌われる勇気」を読んだことを書いたが、またつい最近「アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉」という入門書が出ていた。「嫌われる勇気」が、哲人と青年の対話形式であったが、こちらは本の見開き右ページにアドラーの言葉、左ページにその解説が書かれた、いわゆる「語録集」みたいなものだ。「嫌われる勇気」と一緒に読むと、かなり重複することが書いてあることから、一度読んだことがあるぼくにとっては復習の意味合いがあり、アドラーを初めて読むのであれば、「嫌われる勇気」の対話形式か、「人生に革命が起きる100の言葉」の語録集か、自分の好みで選択することをお勧めしたい。

 

 

 ぼくはこの後すぐ、別の本である「アドラー心理学入門」を読んだのだが、翻訳ものだからか上記の2冊に比べるととても読みにくい。書いてあることの本質は同じことを言っているはずなので、ぼくは頭の中で補完しながら読み進めることができるけれど、初めてアドラーについて読むとした場合は、とても読みにくいと感じる。アドラーが日本でもあまり有名ではなかったのは、アドラーを見出す著者や出版社も少なく、あまり良い本がなかったということもあるのだろう。

 

 「嫌われる勇気」は「20歳の自分に受けさせたい文章講義」の著者である古賀史健が共著になっているからか、とても分かりやすく、そして売れているようだ。これに乗っかるように、同じ出版社(ダイアモンド社)から、さらにアドラーを噛み砕いた「人生に革命が起きる100の言葉」が企画されたのではないかと想像している。

 

 現代心理学で最も影響力を持っているフロイトユングと同世代を生きたアドラーはあまり有名ではない。アドラーフロイトの元にいたことがあるけれど、フロイトを師と仰ぐことはなく、かといって頑なに批判的な態度を取ることもなかったようで、つまり目立つ存在でもなかったのだろう。幼い頃から死の淵に立たされることが多く、生きているうちにやっておくべきことへの優先順位が明確だったのか、まとまった書物を残すこともなかった。他人や自己を批判している暇などなく、過去を振り返り何かを書き残すこともなく、まさに今を生きていたということだろうか。そうした姿に感銘していたアドラー派の人々が、アドラーの考えをまとめたのだろう。しかしその後のナチスドイツによるユダヤ人虐殺により、アドラー派が殺されてしまったことにより、あまり広まることがなかった。

 

 それでも、アドラーが「アドラー派が忘れ去られたとしても、心理学を学ぶ人たちは我々が学んだように行動するようになるはずだ」と言っていたとおり、多くの自己啓発(啓蒙)の考え方が、アドラーを読んだ後では、これアドラーじゃないか?と思うようになってくる。ちょうど今日、アドラーの後に初めて読んでみる自己啓発書として選んだ『「人生成功」の統計学 自己啓発の名著50冊に共通する8つの成功法則』を読んでいたのだが、思ったとおり、名著に出てくる言葉の多くがアドラーを醸し出した。ぼくは結果的にまたアドラーに戻りたくなり、さらに深掘りしたくなっている。しかし、いかんせんアドラーに関する古めの本は読みづらい。今まで自分が読みづらい本を進んで読んでこなかったのだが、そろそろ挑戦したほうが良いということだろうか。